Arafudo Art Annual 2014!

Festival of Art, Tsuchiyu Onsen, FUKUSHIMA

interview with 遠藤麻衣

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薄暗い古民家。通常残されている古民家は富豪や豪商のものが多いが、旧阿部家は普通古民家です。土間に藁が敷いてある床板を張らない「土座(どざ)」は現在の私たちからすると少しおどろおろどしい印象を持ちます。その奥に展示してあるモニターには同じ女性の顔が双子のように並び、ボーカロイドのように加工された音声を無機質に発しています。

遠藤麻衣|Mai Endo

1984年兵庫県生まれ、東京在住。演技を、他者の意識への接触を試みる行為であると捉え活動を展開している。主な作品として、俳優の演技を映した約16分の映像作品「彼女のことをはなしている、彼女のことばで」(2013)、他者の不透明な部分を不透明なものとして共有するワークショップ「秘密は人にははなさない」(2013)など。 また、2013年に演出家の渡辺美帆子と演劇団体「二十二会」を結成。

旧阿部家	PARAVARIANT

旧阿部家 PARAVARIANT

これら“とある状況”の渦中に入った時に、その中でとった行動や、提示した媒体はその場にどういう作用をおよぼすのか、またおよぼさないのか

油画と壁画を学ばれたそうですが、それらの技術的手法または思考法は、作品にどのような影響を与えていますか?

私は大学に入るまでに4年間浪人をしていて、その間、毎日絵を描いていました。画家の方がご自身のアトリエを使って画塾をされていたので、そこに通って絵を描いていました。その方は一つ絵が描き終わるごとに、「どうだった?」といつも聞いてくるので、どんな感触で自分は絵を描いていて、その感触がどのように画面に反映されるのか、というようなことを内省的に思考しながら描く習慣がつきました。その制作思考は今もベースにあります。

大学院では壁画第一研究室という名前の研究室でしたが、中村政人さんの研究室なのでアートプロジェクトを基盤にしたカリキュラムが多かったです。中村さんは、包括的な状況、イベント、お祭り、そういうたくさんの人が動く大きな現象、またそういう現象がおきる場所を作られる方だと認識しています。私は学生時、いろいろな場所に参加しました。そして、これら“とある状況”の渦中に入った時に、その中でとった行動や、提示した媒体はその場にどういう作用をおよぼすのか、またおよぼさないのか、その範囲、速度というようなことを考えさせられました。そしてそういう考えは現在、俳優をやるときや作品を作るときの思考に影響していると感じます。大学院を卒業したと同時に俳優・美術家という肩書きを使いはじめました。

兵庫で生まれ、東京で学び活動をしていますが、それぞれの土地はアーティストにどのような影響を与えていますか?

今ちょうど、それぞれの土地で生活した年数が等しくなりつつあるのですが、双方で培ったアイデンティティが自分の中で分裂してどっちもあるという感触をもっています。特に言語、関西弁で話すときと標準語で話すときの、それぞれのイントネーションにひっぱられて出てくる感情表現や思考の組み立て方、そしてそれらの言語が属している集団が違うことで、たまに認識が困惑します。この困惑にはとても影響をうけていると思います。

出品作「PARAVARIANT」についてお聞かせください

このタイトルは今回の作品のために作った造語なんですが、paraとvariantをくっつけたものです
variant(ヴァリアント)というのは、異なるとか変形といった意味の単語で、絵画では同じ主題で同じモチーフを描いた異なる作品、同主題の異作のことを言います。
para(パラ)はparapraseとかparallelとかで使われている接頭辞で、近いとか擬似といった意味の単語です。
この作品の現象を表す言葉として、限りなく同じでありながら別のものとしてあらわれている、そしてそれは平行して交わることがなく二元的関係をもっているという意味をこめてつくりました。

この作品で隣り合っている二人はどちらも私で、元は一つの映像です。一つの独白映像を、1秒につき25枚のピクチャに分解し、そのピクチャの偶数番と奇数番をそれぞれ抜き出しました。そして偶数番だけ、奇数番だけでもう一度つなぎあわせて映像にしなおしたものを並べています。近似値として同じに見えますが、データは一つとして同じものはありません。また、音声は、録音した音素を数珠つなぎのようにしてつないで、テキストを話しているみたいに聞こえるように作りました。


ありがとうございました。interviewer:yumisong.