Arafudo Art Annual 2014!

Festival of Art, Tsuchiyu Onsen, FUKUSHIMA

Interview with 川田淳

このエントリーをはてなブックマークに追加

川田淳の作品が展示してある旧いますや旅館は、震災で廃業した旅館の一つ。地震や津波で倒壊したのではなく、銀行に差し押さえられる形で旅館は廃業しました。まだ新しく清潔感のある建物。放射能の風評被害で人の来なくなった旅館に、川田淳は『明るい未来』という看板を立てました。

川田淳|Jun Kawada


1983年埼玉生まれ。身体と想像力を武器に、近年は映像作品を中心に制作。主な個展に「ケンナイ」(広島芸術センター、広島、2013年)、「まなざしの忘却」(22:00画廊、東京 、2012年)。グループ展に「Screen」(HIGURE、東京、2014年)、「書を捨てよ、町へ出よう」(黄金町芸術センター高架下スタジオA、神奈川、2013年)、「ヒロシマ・オー ヒロシマフクシマ」(旧日本銀行広島支店、広島、2012年)、「中之条ビエンナーレ2011」(旧五反田学校、群馬、2011年)など。
《大量消費の仕方(IKEA)》 2012, single channel HD video, 10minutes 49seconds

《大量消費の仕方(IKEA)》 2012, single channel HD video, 10minutes 49seconds

街に溢れるあらゆる商品が代替可能なように、僕が育った街も代替可能な街だったんです

今ある政治や環境に対する作品が多いですが、環境が川田さんに与えた影響はどのようなものでしたか

僕は埼玉のベッドタウンで生まれ育ちました。ビルドアンドスクラップを反復し続ける典型的な郊外です。なので幼い頃遊んだ思い出の風景はほとんど残っていません。ビルドアンドスクラップが反復される理由は代替可能性にあると思うんです。街に溢れるあらゆる商品が代替可能なように、僕が育った街も代替可能な街だったんです。代替可能で反復し続ける退屈な世界から抜け出せる方法を考えるようになったという点で、自分が生まれ育った街から大きな影響を受けていると思います。

専攻で学んだことは、川田さんにとってどのような影響を与えましたか

大学時代は油絵科でした。「絵空事」という言葉が意味しているように、絵は嘘をつきます。もちろんこれは絵画に限ったことではありませんが、僕は絵画や 彫刻、文学、音楽、映画等々、あらゆる人間の制作物はつくりごとであり、嘘、虚構だと思っています。そのような世界だからこそ、うつしだせるものがあると思います。こういう考えを持つようになったのは、ひょっとしたら絵画を専攻していたことが影響しているのかもしれませんね。

自分が出会った人にまず届ける。その先はそこからしか見えてこないと思います。

旧いますや旅館で展示されている『明るい未来』とはどんな作品ですか?

今回の作品は3つの映像とその映像の中で使用されている看板から成る「明るい未来」という作品です。
看板には「明るい未来」という言葉が書かれています。これは帰宅困難区域に指定されている双葉町商店街の「原子力 明るい未来のエネルギー」からとった言葉です。

どのようにしてこの作品が生まれたのですか?

制作のために土湯の街に下見に訪れ、その時に街の方々と世間話程度ですがお話を伺ったことがこの作品をつくる契機となりました。ちょうど僕が訪れた頃は「美味しんぼ」という漫画で福島第一原発事故の影響で鼻血が出る症状が多くなったという描写がされて問題とされていました。土湯の街の方からも風評被害ということを聞きました。実際に土湯の様々な箇所で放射線量を測定しましたが、東京よりもかなり低い数値でそのことに驚きました。そこで僕は放射能被害の真偽を判断するのではなく、そのような確かめることが困難であいまいな現実の中で、僕らは今までも虚構に包みこまれて生きてきたのではないかと考え、制作しました。

現在、興味のあるモノや人、事象があれば教えて下さい。

現在最も注視しているのは沖縄県辺野古及び高江の米軍基地新設問題です。世間では移設問題とされていますが、僕はこの問題を新設問題と捉えています。僕自身は沖縄で生まれたわけでも育ったわけでもありませんが、このことは僕にとってとても重要な問題です。沖縄という地政学的にもエッジに位置する場所だからこそ見えてくる風景があると思います。原発の問題が明るみになったことによって多くの人が学んだように、何も声をあげないということは容認してしまうことになってしまうのです。もちろん原発と基地問題を同列に語ることは出来ませんが、僕はこの問題に対し何も声をあげずにいるということはしたくありません。

制作する上で常に気をつけていることがあれば、教えてください。

誰に伝えたいのかを1番よく考えます。J-POPのようなみんなに伝わ る「愛してる」は最悪だと思います。自分が出会った人にまず届ける。その先はそこからしか見えてこないと思います。

ご自身のアートの楽しみ方があれば、教えてください。

独断と偏見で楽しむことです。アートを楽しむために誰かと歩調を合わせる必要は全くありません。自分が楽しめる方法を創造すればいいと思います。


ありがとうございました。interviewer:yumisong