Arafudo Art Annual 2014!

Festival of Art, Tsuchiyu Onsen, FUKUSHIMA

Interview with 白雙全 (L+)

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L+の発起人であるパク・シェン・チェン(白雙全)は1977年生まれの香港アーティスト。2003年から2007年まで明報新聞のビジュアル・アーツのコラムを連載していた。パクは2010年の第七回台北ビエンナーレ、2008年の第三回横浜トリエンナーレに参加。2009年には第53回ベニスビエンナーレの香港代表として参加。2012年にはフリーズ・ロンドンの中で最高賞となる「ベスト・スタンド・アワード」を受賞。2012年には現代中国美術の「ベスト・アーティスト」(CCAA)より受賞。「香港アーツ・デベロップメント・アワード」受賞。
L+は「ヘブンズ・コーナー」と[ ]という概念を作った。L+はコアメンバーにWo Man Yeeと Lee Soen Longを Yim Sui Fong持つアーティスト集団である。

2014年9月9日に日本と香港で同時開催される『Northeast Japan Tour – Photography of Disappearance /日本東北記録喪失の旅』という町あるきツアーを開催するL+のパクに話を伺った。
ツアーの詳細はこちら。http://arafudo.net/20140909lplus/
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ほとんどが国際的な舞台での発表ばかりでしたが、根底にあるのは新聞の仕事をしながら培ったものです

ベニスビエンナーレの香港代表を始め、世界中の数々の大きな国際展に参加し、文字通り香港を代表するアーティストの1人になった貴方が、キャリアの中で特に記憶に残った事等あれば教えて下さい。

自分のキャリアで最も大事な時期は2003年から2006年の4年間、地元の新聞に毎週連載を持っていたので、そのために毎週新しい作品を作っていた時です。その時期はちょうど大学から卒業したばかりでした。公共のメディアにどうやって作品を載せるか実験するのにとてもいい機会だったと思います。この機会が自分の作品を、個人的な感情から、公共的で、社会的、政治的な問題へと導いていったと思います。2009年のベニスビエンナーレの参加後は、ほとんどが国際的な舞台での発表ばかりでしたが、根底にあるのは新聞の仕事をしながら培ったものです。

何故個人でなくグループで活動を始めたのか経緯を教えて下さい。

私のアート活動では、常に人々を巻き込みます。共同製作で作業をする時、2012年に参加した「Mobile+ Yau Ma Tei」展での時のように、チームで仕事をします。最近はチームでの活動をすることが多いので、アーティスト集団のL+を結成しました。グループには主要メンバーが4人いて、私が実施する様々なプロジェクトを考えて、詳細は皆一緒に実行します。
「L」の文字は二つの力の方向で構成され、1つは上に向かい1つは横に向かっています。水平の線が我々のいるこのコミュニティを包括している、一方で上に向かって伸びている線は天空とつながっているのです。4つの「L」の文字が平面上で「+」を構成し、「L」の文字が回転することによって円錐形ができるなど、様々な可能性があります。L+の目的は4つの「L」の文字によってできる4つの角と円錐形内にフィットするプロジェクトを創り、キュレーションすることです。
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福島のことを、海外に住む人としてどう考えているのか?また、今回福島で開催される「アラフド・アート・アニュアル2014」に参加することにどういった意義があるのか、海外アーティストの立場として考えることがあれば教えて下さい

原発事故が大地や海に損害を与えるだけでなく人間や動物にまで被害をもたらしました。放射能が漏れがもたらした結果は、日本の人々に限らず、エコロジーや生態系の面で世界中に莫大な影響を与えました。これらは我々がニュース等から知ったところの話です。「アラフド・アート・アニュアル2014」に参加することによって、L+は「変化」と「喪失」との関連から生まれる感情を共有したいと考えています。

「写真」を消去することによって、保存することなく、撮影するという、新しいコンセプト

香港でも同じプロジェクトを同時開催するとのことですが、今回のプロジエクトを思いついた経緯を教えて下さい。

香港では郊外緑地帯における東北の新しいエリアの都市開発に対する抗議活動が活発に行われていますが、香港の問題と「アラフドアートアニュアル2014」参加の話が全くの同じタイミングできた時に即時に感じ取った共通点は、双方の地で景観や人間性の根本的な変化があったり、今後あるであろうということです。
全てのL+のプロジェクトのアイデアはノートブックに書かれたものです。いつ何時思いついた発想であっても、その場でノートに書き留めておきます。それで実際にそれらのアイデアが実現されるか否かは神のみぞ知るところです。 「記録喪失」のアイデアは2014年8月17日のノートに出てきます。

今回実施するプロジェクトについて詳しく教えて下さい。

「Northeast Japan Tour – Photography of Disappearance /日本東北記録喪失の旅」では土地のことに精通している人が、ツアーガイドとして、ツアールートと旅程を我々と一緒にデザインします。ツアーガイドは参加者を観光スポットに連れて行き、場所のストーリーや歴史について紹介します。その後、参加者全員に「写真撮影タイム」を与えられますが、実際には、写真を1枚撮りたいと思ったら、写真は撮影せずに、そのかわりに、携帯電話の中に既にある写真を1枚消去します。ツアー最後に、全ての参加者がツアーガイドと一緒にグループで記念写真を撮影します。それが唯一のイベントを記録するために撮影される写真です。その後、参加者がどんな写真を消去したのか、また、どのシーンで写真を撮ろうと思ったのかを共有する話し合いが開催されます。話し合いはツアーのルート順にそって行われ、音声が録音されます。

プロジェクトに多くの人々を巻き込むことを考えていますね。プロジェクトを実施後、どうやってプロジェクトが成功だったと判断するのか?どういった結果を望んでいるのか?教えて下さい。

私たちは「写真」を消去することによって、保存することなく、撮影するという、新しいコンセプトで新しいモデルの写真術を創出しようと考えています。福島と香港における「東北記録喪失の旅」はある種の実験です。「記録喪失」が流行のようにはやるようになるといいなと考えてます。


Answered by 白雙全 |Pak Sheung Cuen (L+) and 胡敏儀|Wo Man Yee (L+)
ありがとうございました。Interviewer: 増山士郎