Arafudo Art Annual 2014!

Festival of Art, Tsuchiyu Onsen, FUKUSHIMA

Interview with 三田村光土里

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文化庁海外派遣芸術家としてフィンランドに渡り、メルボルン、ドイツ、オーストリアなど様々な土地で滞在制作を重ねてきた三田村光土里。日々の暮らしの中から立ち上がる、小さなできごとを丁寧に見つめ、その中から素材を引き出して作品にしていきます。
こけしの里でもあるこの土湯温泉町では、町を見続けてきたこけしたちが彼女の作品を彩ります。喋らないこけしたちからアーティストは何を聞き出したのでしょうか。

三田村光土里|Midori Mitamura

1964年、愛知県生まれ。
「人が足を踏み入れられるドラマ」をテーマに写真や映像、様々な素材を用いた空間作品を国内外の美術展で発表。近年はアートプロジェクト「Art &Breakfast」を世界各地で開催(ストックホルム、東京、ベルリン、メルボルン、ウィーン、ベルファスト)。
主な個展に「夜明けまえ」(Gallery Terra Tokyo、2013年)、「グリーン・オン・ザ・マウンテン」(uqbar、ベルリン、2012年)、「I’m standing beside the water」(バンビナートギャラリー、東京、2011年)、三田村光土里@ヨコハマ(創造空間9001、横浜、2008年)、「グリーン・オン・ザ・マウンテン」(ウィーン分離派館・ゼセッション、2006年)。主なグループ展に、「そらいろユートピア」(十和田市現代美術館、2014年)「虹の彼方」(府中市美術館、2012年)、「クワイエット・アテンションズ」(水戸芸術館現代美術センター、2011年)、他多数。
http://www.midorimitamura.com/

『夜明けまえ』2013,Gallery Terra Tokyo

『夜明けまえ』2013,Gallery Terra Tokyo

身近なものたちが特別な表情を帯びる事で、現実と非現実との微妙な差異が生まれます

ファッションと写真を専攻された三田村さんの作品づくりは、これまでどのようにして行われたのですか?

これまでに、ポートレイトで物語を表現する作品をいくつか制作してきました。それらの登場人物が演じる人物像を設定する上で、身につけている衣服は重要な役割を果たしています。また、たまたま出会った古着などから作品を発想することもあります。

どのようにして、現在のような既成品等を少し様子を変えて設営する手法で作品を制作するようになったのですか?

身近なものたちが特別な表情を帯びる事で、現実と非現実との微妙な差異が生まれます。その差異によって観る人の想像が喚起され、作品という非日常と日常の世界を行き来できるような感覚を引き出せる装置を提供しようとしています。
この手法は特別なものではなく、子供の頃に家の中の日用品で小さな世界を作って遊んでいたときの体験に基づいています。

愛知に生まれ、東京で生活し、海外の沢山の場所で作品を発表しています。
それぞれの土地からはどのような影響を受けていますか?

国や歴史、文化が違っても、それぞれの日常生活の中で共有できる感覚や感情とは何かを常に意識すること。それらを作品に投影してきました。

自身をドラマの中の一部と感じることができるような装置を創ろうとしています

本作『そこからの眺め』を、こけし見聞録館を展示場所に選ばれた経緯を教えて下さい。

無数のこけしに見守られる空間の奥に続く階段を上ると、時が止まったような部屋が現れ、古い写真のガラス乾板が箱に眠っているのを見つけました。そこには、地元の写真館の撮り手によって収められた、かつての人々の歴史や人生が息をひそめるようにたたずみ、今の福島や土湯に起きた現実を知る由もない過去の景色や人々の姿が写り込んでいました。部屋の壁には、幼い子供が日常の出来事の何かに心を痛めて殴り書きしたような生々しい文字が残されています。
部屋の窓からの山の眺めは、残された古いネガの景色と大きく変わってはいません。しかし人々の心は歴史の中で大きく揺れ動いています。
なにも言わないこけしたちは、土湯の人々の人生を見守り、なにげない日常の声を聞いているかのようにずっとそこにいます。
この作品では、流れ去って行く日常の断片が、その声を聞き続けるこけしに記憶として宿り、ささやきとなって漏れ出ているような部屋をつくってみたいと思い立ちました。

『Art & Breakfast Fuchu』2012,府中市美術館『虹の彼方 こことどこかをつなぐ、アーティストたちとの遊飛行』展

『Art & Breakfast Fuchu』2012,府中市美術館『虹の彼方 こことどこかをつなぐ、アーティストたちとの遊飛行』展

制作中に印象に残ったエピソードがあれば教えてください。

土湯を歩くと、行く先々のいたるところに大量のこけしが並び、人々の人口をはるかに凌駕する数のこけしが土湯には存在すること。
愛をも超越して見える土湯の人々とこけしの不思議な関係性。

「人が足を踏み入れられるドラマ」をテーマ。
「人が足を踏み入れられる」とはどういうことなのでしょう?

私たちは常に、本や劇場、テレビや映画など、ドラマという創作・想像の世界と現実を頭の中で行き来して生きています。小説のページを開けば、私たちは瞬時にドラマに入り込んでしまう能力を持っています。しかし、ドラマはいつも日常とは物理的に存在を別にしており、その境界線があることで、人はドラマをドラマとして意識の中で分別しています。「人が足を踏み入れられるドラマ」では、物語の挿絵のようにモノを空間に存在させることで現実との境界線が曖昧になり、鑑賞者が、自身をドラマの中の一部と感じることができるような装置を創ろうとしています。

人の良心とは裏腹にある人間というものの闇の部分に関心があります

現在、興味のあることがあれば聞かせてください。

人間が作りだしている、大きな世界の闇と個々の心の闇。その闇は昔から絶え間なくありながら、表面的な平和に気を取られ、その闇から目をそらしてきたような気がします。人の良心とは裏腹にある人間というものの闇の部分に関心があります。
それは心理学的にというよりも、生物学的な検証も必要だと感じています。

芸術作品を作ることで気に留めていることをおしえてください。

問題提起に対し、自分なりの答えをもつこと。

ご自身のアートの楽しみ方があれば、教えてください。

もっと楽しめればいいのに、といつも思っています。


ありがとうございました。interviewer:yumisong


見聞録館 『そこからの景色』アラフドアートアニュアル2014

見聞録館 『そこからの景色』アラフドアートアニュアル2014