Arafudo Art Annual 2014!

Festival of Art, Tsuchiyu Onsen, FUKUSHIMA

Interview with 青山悟

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ヨコハマ創造都市センター(YCC)にて2014年8月1日から2014年8月26日まで公開制作をしている青山悟さん。『世界を縫う』と題した制作は、当初の予定から大幅にスケールを広げ、制作に10年はかかるであろうプラン『アーティスト達の世界地図(ドローイング)』へ。その制作のためのエスキースは、YCCから土湯温泉町の旧岩城屋旅館跡地に引き継がれます。どのくらいの時間とどのくらいの人たちの手で、このエスキースに描かれた世界はできあがっていくのでしょう。エスキース自体が完成度の高いドローイングとして立ち上がりつつもあります。制作に至ったエピソードなどを交えながらお話を伺いました。

青山悟|Satoru Aoyama

1973年生まれ。ロンドンのゴールドスミスカレッジを卒業後、シカゴ美術館付属美術大学院にて修士課程を修了。大量生産の為の道具である工業用ミシンを用いて丹念に縫い上げられた刺繍作品を通して、現代人の営みと機械(テクノロジー)との関係性に言及し、またそれにより失われつつある人間の感受性や創造性についての問題を提起する。主な展覧会に「Storyteller」(国際芸術センター青森、青森、2012)、「メグロアドレス」(目黒区美術館、東京、2012)、「六本木クロッシング2010:芸術は可能か?」(森美術館、東京、2010)など。 http://www.satoruaoyama.com/

『アーティスト達の世界地図(ドローイング)』制作風景

『アーティスト達の世界地図(ドローイング)』制作風景

考える前に手を動かせ。だけど思考停止はするな

古い工業用ミシンで制作されていますが、ミシンを使うようになった経緯を教えてください。

大学で専攻だったテキスタイル科だとミシンの他に機織り、編み物、手縫い、フェルト作り、シルクスクリーン、等を習うのですが、なぜかミシンだけ最初から上手かったんです。そして他の技術のセンスは絶望的でした。あと古い機械の格好良さに惹かれました。

イギリスの芸術大学でテキスタイルを学ばれたのですね。

当時のイギリスはテキスタイルと言ってもやはりコンセプチュアルな作品が全盛の時代で、コンセプトさえしっかりしていれば単なるベニア板でも作品になる、とかそんな感じのことを教わってきました。当時、そういうアートの在り方に対して憧れもあったけど、やはり信じきることができなかったし、挫折もありました。アートに対して議論する上で言葉の問題もあったし、自分より頭の良い人達はいくらでもいたから。いつも「考える前に手を動かせ。だけど思考停止はするな」って思いながら制作をしているのですが、それはきっとこの時代の経験が大きかったんだと思います。

民衆の芸術を確立しようとしたウィリアム・モリスを思いだしますね

モリスに関して言うと、資本主義に対抗しようとした彼の活動をよく参照したりしているのですが、どちらかというと彼の思想そのものよりも、思想と美意識の結びつき方に興味があります。

『アーティスト達の世界地図(ドローイング)』公開制作風景

『アーティスト達の世界地図(ドローイング)』公開制作風景 子どもたち

それでもより良い世界を願って自分ができることを続けて行くしかない

本作品は、個人の作業を超えた大きなスケールですね。

巨大な地図を分割して、パーツごとに組み替えが可能な地図を刺繍で作るというアイデアは前からなんとなく温めていたアイデアだったのですが、サイズが大きすぎて中々実行に移せないでいました。そんな時ヨコハマ創造都市センターという大きい空間での公開制作の機会をいただいたので思い切って下図に取り組むことにしました。

制作中に印象に残ったエピソードがあれば教えてください。

制作がきつい時、朝起きたら作品が少しでも進んでいたらいいな、とかくだらないことを妄想することがあるのですが、ある朝公開制作の会場に来たら子供達が海を鉛筆で塗ってくれていて、妄想が現実になった気がしました。

10年かかるプロジェクトだと聞きましたが、達成した頃の地図の上での世界の変化はどのようになっていて欲しいと考えていますか?

10年って、ひとつの作品の制作期間としては長いけど、実はそんなに長くないと思います。例えば、ソフトバンクの孫正義さんは300年先のテクノロジーを予想しながら30年先までの会社としてのビジョンを提示しているそうです。正直、今の世界情勢を考えると、10年後を楽観的には考えることはできないのですが、それでもより良い世界を願って自分ができることをコツコツと続けて行しかないと思っています。

真剣に誰かと語り合っている時間が最高に楽しい

現在、興味のあるモノや人、事象があれば教えて下さい。

フレンチブルドッグ。ずっと飼いたくてしかたないです。移動が多いアーティストには難しいのでしょうか?それとも「案ずるより産むが易し」なのでしょうか。

制作する上で常に気をつけていることがあれば、教えてください。

制作前にアルコールティッシュで手を拭く。刺繍は常に画面を手で触っているので。あとは最初の質問にあった「考える前に手を動かせ。だけど思考停止はするな」ってことですね。

ご自身のアートの楽しみ方があれば、教えてください。

作家にとって良い作品って自分にとってもわからないことをより多く含んでいるものだと思っています。そして作者にとって恐らくわかっていない部分をああでもない、こうでもないって真剣に誰かと語り合っている時間が最高に楽しい。


ありがとうございました。interviewer:yumisong